トランスサイレチン型心アミロイドーシスを
治療される方へ

トランスサイレチン型
心アミロイドーシスとは

アミロイドーシスとは

「アミロイド」と呼ばれる異常なタンパク質が体の臓器にたまり、本来の働きを失わせる病気です。この「アミロイド」とは、体のなかで重要な働きをしているタンパク質の形や性質が変わり、水や血液に溶けにくい線維状 になってしまったものです。
「アミロイド」のもととなるタンパク質は、現在30種類以上あることがわかっており、その種類によってたまりやすい臓器や組織、あらわれやすい症状が異なります。

アミロイドーシスとは

またアミロイドーシスは、アミロイドが全身のさまざまな臓器にたまる「全身性」と、1つの臓器のみにたまる「限局性」にわけられます。
「全身性アミロイドーシス」のなかでも、主に心臓にアミロイドがたまり、心臓のはたらきに異常を起こすのが、心アミロイドーシスです。

トランスサイレチン型
心アミロイドーシスとは

トランスサイレチン(TTR)というタンパク質に異常が起こり、アミロイドとなって心臓にたまることで、心臓のはたらきに異常を起こした状態のことを指します。

TTRは、肝臓で合成され、通常4つ1組で形作られています(四量体)。TTRに異常が起こると、4つがバラバラになり、糸くずのような形に集まります。その糸くずがさらに集まり、「アミロイド」という水や血液に溶けにくい線維状になり、体の臓器にたまります。

トランスサイレチン型心アミロイドーシスとは

TTRのはたらき

  • 体内でビタミンAやホルモンを運ぶ役割を担う。
  • 神経の保護、記憶や認知機能維持などにおいて、重要な役割を果たす。
TTR四量体

また、トランスサイレチン型心アミロイドーシスには、遺伝子の変異(変化)によりタンパク質に異常を起こす「遺伝性(変異型)」と、遺伝子の変異によるものではなく、加齢が1つの原因とされている「野生型」の2種類があります。

「野生型」のトランスサイレチン型心アミロイドーシスでは、アミロイドが手首や腰の神経の通り道にたまりやすく、 手根管症候群 ( しゅこんかんしょうこうぐん ) 脊柱管狭窄症 ( せきちゅうかんきょうさくしょう ) があらわれることがあります。一方、「遺伝性」では、心臓以外に神経や消化管などにアミロイドがたまりやすいことが知られています。

野生型トランスサイレチン型
アミロイドーシス
遺伝性トランスサイレチン型
アミロイドーシス
アミロイドのもとになる
タンパク質
野生型トランスサイレチン 変異型トランスサイレチン
原因 加齢 遺伝
好発年齢・性別 60歳以上の男性 20~70歳
アミロイドが
たまりやすい部位
心臓、関節・靭帯、神経など 神経、心臓、消化管、
腎臓、眼など
※横にスライドしてご覧ください。
参考:
日本循環器学会(編). 2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン. P.9-16.(2025年2月確認)
難病情報センターホームページ. 全身性アミロイドーシス(指定難病28). (2025年2月確認)
安東由喜雄. 日内会誌. 2009; 98(8): 2006-2012.

トランスサイレチン型
心アミロイドーシスの症状

以下のような症状が病気と関連してあらわれることがあります。気になる症状がある場合にはかかりつけ医に必ず相談しましょう。

心不全

心臓にアミロイドがたまり、心臓の働きが悪くなったこと(心不全)により、息切れやむくみ、疲れやすく感じるなどの症状があらわれることがあります。

心不全

不整脈

心臓の拍動を制御している電気の流れがアミロイドによって邪魔されることにより、脈が速くなったり遅くなったり、不規則になったりする症状(不整脈)と、ドキドキする、息切れ、めまい、胸が苦しい、気を失うなどの症状があらわれることがあります。

不整脈

大動脈弁狭窄症 ( だいどうみゃくべんきょうさくしょう )

心臓の弁の1つである大動脈弁にアミロイドがたまって働きが悪くなると、心臓が十分な血液を送り出せなくなり、胸の圧迫感や息切れ、気を失うなどの症状があらわれることがあります。

手根管症候群 ( しゅこんかんしょうこうぐん )

手首の神経(正中神経)にアミロイドがたまり、圧迫することで親指や人差し指、中指、薬指(薬指は親指側のみ)にしびれや痛みがあらわれることがあります。

手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)

脊柱管狭窄症 ( せきちゅうかんきょうさくしょう )

背骨にある神経の通り道(脊柱管)にアミロイドがたまり、圧迫するようになると足腰のしびれや痛みが起こる可能性があります。

脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)

これらの症状は、アミロイドの蓄積が進むにつれて重症化していきます。重症化すると入退院を繰り返すようになりますが、入院するごとに身体の機能も低下することが知られています。そのため心アミロイドーシスは、早期に治療を始め、入院が必要にならないよう重症化を防ぐことが大切です。

トランスサイレチン型
心アミロイドーシスの治療

トランスサイレチン型心アミロイドーシスの治療には、原因である「アミロイドーシス」そのものに対する治療と、「心臓の症状」に対する治療の2種類があります。

1.アミロイドーシスそのものに対する治療

1.アミロイドーシス
   そのものに対する治療

病気の原因である「アミロイド」が新たに作られないように抑えるお薬(トランスサイレチン四量体安定化薬)を使います。このお薬は、トランスサイレチンが、元々の4つ1組の形からバラバラになり、アミロイドになることを防ぎます。この治療法の登場により、診断することができれば治療により病気の進行を抑えることが期待できるようになってきました。

2.心臓の症状に対する治療

利尿剤により、体内の余分な水分を減らしてむくみをとり、心臓にかかる負担を軽くします。また、心臓の動きのリズムが整っていない場合(不整脈)には、リズムを整えるお薬や血液を固まりにくくするお薬を使ったりします。脈が少なすぎる場合には、ペースメーカを埋め込むこともあります。

◆治療に対する医療費の助成

「全身性アミロイドーシス」であるトランスサイレチン型アミロイドーシスは、国の「指定難病」となっており、難病法による医療費助成の対象です。詳しくは、「知っておきたい社会保障制度」をご参照ください。